ライチョウ観察会報告


乗鞍でライチョウを見た!
自然保護委員長 杉田浩康


ガスと霧雨の中にライチョウが居ました。母鳥と、今年生まれたヒナの2羽。頭から背中は茶色、腹のあたりはだいぶ白くなって、あと2週間もすると親から離れて冬を越します。這松の下に巣を発見、孵化しなかった卵2個が残されていました。

 日本人は、昔からライチョウを高山に棲む神の鳥として大切に扱ってきました。だから日本ライチョウは人間を恐れません。世界中で日本ライチョウだけだそうです。ライチョウは北半球の高緯度地方に広く棲んでいますが、その南限が日本ライチョウ。昔は日本の広い範囲にいましたが、縄文時代の高温期に絶滅し今では、北・南アルプス、乗鞍、御岳、火打山に1600羽ほどしか棲んでいません。

 9月9日、10日に乗鞍岳で行ったライチョウ観察会には講師として信州大学の中村浩志先生に来て頂き、雨の中、山岳協会内外から18名が参加しました。
中村先生は長年ライチョウの研究をしてこられ、乗鞍岳には年間60日以上も入っているのだそうです。個体識別のため足環を付け食べ物、親子関係、移動範囲などを記録します。地道な研究の結果ライチョウの生態が明らかになり共生の道が見えてきます。
ライチョウは6月に5〜7個の卵を産み、3週間ほどで孵化するが、幼鳥時の死亡率が高い。夏から秋は高山植物の花や実、葉を食べ冬は標高2,000m付近まで下がってダケカンバの芽を食べている。日本の高山は欧米と比べると多様性が豊かでライチョウには住みやすい環境だったが、温暖化で生息域が減り、下界のキツネ、テン、ハシブトガラスなどが登って来て危害を加えたり、増えた登山者が高山植物を踏み荒らしたりして、生息数は減少の一途であることなど肩の小屋で2時間にわたって熱く語って頂きました。

絶妙なバランスで成り立っている高山の生態系を人が壊してはいけないと強く感じた2日間でした。


下記、写真報告によるレポート(外部リンク)もご参照ください。

http://www.mushikura.com/nature/raityo10/story.htm