懸垂下降


  1. 支点

     懸垂下降とは、二点以上の確実な支点を、一つにまとめ、その支点にかけたザイルに吊り下がって,下降することである。
     支点には、下降する者の、重量の2〜4倍の荷重がかかる。その荷重に、耐えられる強固な支点にしなければならない。しかも、万が一の破断に備えて、複数の支点を連結して懸垂下降支点とする。ただし、幾つかの支点を連結しているとは言え、一点、一点が、2〜4w(下降者の重量)の荷重に耐えられる強さがなければならない。強固とは言え、一点では、支点が破断したとき致命傷になることを避けるためである。しかし、予測される荷重量に対して耐荷重強度が不足していることもある。そうした場合は、幾つか支点を連結し、強度を高める。ベストではないが、連結によって、十分な強度を持った支点を複数作成し、それを連結して、支点とすると良い。ただし、十分な強度を持たない支点を幾つか連結しただけの支点では、強度の不足する支点に、うまく荷重を、分散し、その強度にみあった荷重がされていても、一つの支点が破断すれば、連鎖反応のように次々と破断するかも知れない。十分な強度の支点を設けることが出来ずに、不確実な支点を幾つか連結しても、確実にはならず、不確実であることに変わりはない。
  2. 支点とザイルの掛け方


    1支点が破断すれば
    ロープが外れる

    懸垂ロープの回収不能
    支点の強度を増加する
  3. 懸垂下降の仕方

    1. セルフアンカーを取る。
      下降器を懸垂ロープに取り付け、下降に入るまでセルフアンカーを取り、下降態勢を整えてからセルフアンカーを外す。
    2. 末端を結び、下降ロープをおろす。ロープが団子になる。木の枝、岩の突起などに引っかかるなど投げ下ろしたとき、ロープが絡まるトラブルが多い。ロープトラブルを起こさないよう、丁寧に、慎重に投げ下ろす。
    3. ロープの絡まりを防ぐため、ロープを投げ下ろさずに、下降者の動きにあわせて、ロープの長さ半分まで、ロープを上から繰り出してやることも一つの方法である。下降者はそれ以降自分でロープを下ろしながら下降する。ロープ末端を結んであると岩の突起などに絡むこともあるので、この場合、末端を結びつけず、一本ずつ別々に瘤を作っておく。
    4. 下降器を懸垂ロープに取り付ける。
    5. 手袋をはめ、ロープを握り下降態勢にはいる。下降器より下の制動ロープから絶対制動手を離してはならない。
    6. 手袋、シャツ、スカーフなどを下降器に巻き込まないよう注意する。
    7. 次の支点を構成するためのハーケン、ハンマーなど用意をして下降する。
    8. 常に、下降途中でも停止できる態勢で下降しなければならない。
    9. 停止後、仮固定できなければならない。
    10. オーヴァーハングを超える時、テラスから垂壁へ降りる時などは、足の運びを一旦止め、体を後ろに反らすようにしてから、頃合を見て、飛び降りるように下降する。このとき、逆さになりやすい。逆さになっても制動手を絶対に離してはならない。
    懸垂下降
    下降器と巻きつけ結び
    シャントの使用
  4. 懸垂下降時の確保について その1

    1. セルフアンカーを取る。下降に入るまでは有効である。
    2. 下降ロープに、巻きつけ結び、プルージュック結びなどでセルフアンカーをとる。
      1)ただし、巻きつけ結びなどが正確に機能するかどうかは、結び方、結ぶロープの種類、などによって大きく異なる。必ず、利くかどうか、ロックを解除できるかどうかなど荷重をかけて、テストを実施して行なう。
      2)ロックを解除できない場合スリングを切断することも考えてナイフを用意する。
     *巻きつけ結びのトラブルと問題点
    1. ロックしやすい。場合によっては、ロックを解除しにくい。
    2. ロックしないこともある。巻きつけ結びが機能しない。
    3. 下降器と巻きつけ結びをセットする位置関係に留意しなければならない。
      巻きつけ結びは、誘導手の届く範囲で、下降器と干渉しない位置にする。
      下降器には手が届かなくても良いが、途中停止、仮固定が出来なくてはならない。
    4. 懸垂下降に入るには、下降器が動かないよう制動停止してから、下降用意を整える。片手は、制動ロープを握り締めているので、もう一方の手で操作しなければならない。足場の悪いところでは、セルフアンカーに体重を預けて、下降器や巻きつけ結びをセットせざるを得ない。
    5. 巻きつけ結びとセルフアンカーの荷重を抜き、巻きつけ結びをロックしないよう、注意しながら片手で操作して懸垂下降に入る。足場の悪い岩壁では、非常に難しい。
    6. 巻きつけ結びの替わりに、シャントを使用すれば、ロックとその解除、仮固定を非常にスムースにできる。巻きつけ結びによるトラブルの多発を解決する上で非常に有効である。シャントの使用を強く推薦する。
    7. 巻きつけ結びによるセルフアンカーは、手を離したときのセルフアンカーに過ぎない。
  5. 懸垂下降時の確保について その2(巻きつけ結びを取らず、確保して下降する)

    1. 懸垂ロープを支点にかける。
    2. ロープを支点付近で結ぶなどして固定し、2本のロープに分ける。
    3. 1本のロープに下降器をセットし、懸垂下降する。もう1本のロープで確保する。
    4. 懸垂下降せずに一本のロープで確保し、もう一本で吊り降ろす方法もある。
    5. 2番目以降の下降者については、先に下降したものが、下でロープの引き加減をコントロールして確保する。又は、ロープを引き上げて、先の方法で確保する。
    6. 最後の者は懸垂ロープをかけ直し懸垂下降する。この場合下の者が懸垂ロープを引いて確保する。
    7. 懸垂ロープを引き上げ、下の者が吊り降ろす方法もある。